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2005世銀年次会合 ニューヨーク国連フォーラム: NY UN Forum
NY国連フォーラム、DC開発フォーラムの皆さん、今日、早朝からNYとDCの往復をして、ユニセフの代表として世銀の年次会合に出てきました。と言っても、世銀を統治する「開発委員会」の会議場には入れないので、他の代表団の人々と隣接する部屋で大画面のモニターを見ながら、様子を伺うだけなのですが。ただ、開発委員会でのやり取りは、世界の開発に関する重要な議論がどのように行われているのか知るためにも大変興味深いものでした。一昨年は、MDGのモニタリングをめぐって、WolfensohnとClare Shortの言い合いなどがあってちょっと迫力あるシーンが見られました。先々週の国連サミットでのMDGの扱いを受けてどう展開していくのかも注目です。日曜日のワシントンは人もまばらで、一時のような反グローバリゼーションのデモ騒ぎもないようでした。今回の年次会合には私もいくつか関心を持っている点がありました。アメリカのイラク侵攻の理論的立役者であったPaul Wolfowitzが、世銀の総裁として始めての開発委員会でどのようなアジェンダ設定をするのかということと、世銀やIMFがG8で取り付けた債務の帳消しをどう考えているのかということです。Wolfowitz総裁は昨日の演説でも、貧困、MDG、アフリカなどのWolfensohnのラインを守ったように思います。開発は、労働力と資本の投入で計算できるほど簡単でないこと、いわゆる「ソフト」の大切さ、そしてNelson Mandelaの言葉を引用してのみんなのためのリーダーシップの重要性、Grameen BankやBRACを引き合いに出しての市民と政府を結びつけるCSOの役割など、開発関係者が喜びそうなことをちりばめての発言でした。世銀内部の評価を受けてのインフラ重視に大きく傾くのではないかという見方もありましたが、そのあたりは、過去の反省に立ったインフラ事業という言い方で、バランスがとれていたように思います。今後のWolfowitzの理論展開がこのリーダーシップ論を中心としていくのか、注目です。さて、開発委員会の最初のセッションの最後、正午前に出てきたのが債務帳消しの際のAccountabilityの問題でした。スイスの代表が債務帳消しには反対ではないが、これだけの金額(HIPCにおけるIDA, ADF, IMFの債務を100%帳消しにする。約550億ドル)を誰も責任を取らずに帳消しにすると、納税者である国民にどう説明すればいいのか困る。途上国政府、他の援助機関の失敗、天災などの外部要因もあったかもしれないが、世銀やIMFの責任も問われてもしょうがない。同じような過ちを二度と繰り返さないことが大事だ、というようなことをいったとたん、それまでざわついていたモニター室の中がシーンとなりました。条件をつけて、指導もして、ローンを貸した銀行が、ミス・マネジメントの結果、不良債権を帳消しにしてもらって、しかもその穴埋めのCompensationをやっと先進国に取り付けて、これで肩の荷が下りるぞというときに、そんなことをいうなよ、という感じでした。開発委員会の議長として最後を飾る南アフリカのTrevor Manuel蔵相の力量とナイジェリアのンゴシ女史の「ヨーロッパだって戦争やって間違いしたけど、戦後復興を支援してもらって立ち直ったじゃないの」という言葉でなんとかその場を収めることができました。これで、のど元過ぎれば熱さ忘れるのか、それとも世銀やIMFが変わって、間違いを繰り返さないよう正念場として捕らえるのか、さてどうする、という問いかけを誰かがやらなければという了解があったのかもしれません。最後に出すコミュニケの取りまとめもこのあたりでの苦労があったようです。午後の記者会見にもでました。債務の帳消しについては、このところの原油価格の高騰で、そのメリットも帳消しになるという意見もでましたし、コンディショナリティーの見直し議論、IMFのDe Rato理事長からも今後ODAが大量に増えることを考えるとそれを消化し、結果を出せるかどうかが問われている、という見解もでました。債務の帳消しが、途上国の保健や教育など人々のためになり、MDGの達成にもつながるような結果を出せるのであればいいのですが。香港でのDohaラウンドの展開も注目していきたいと思います。詳しくは、世銀年次会合のサイトへ。最後に、私は世銀前総裁のWolfensohnの開発へ一番の貢献は、世銀を人間開発に近づけたこと、貧困を世銀のミッションだと言い切ってMDGを掲げたこと、そしてそれをモンテレー・コンセンサスにもっていったことではないかと思います。世銀の関係者から、貧困削減をミッションにして「開発」銀行でいくのか、それともマクロ経済の安定をIMFとやっていく「貸し金業」に徹するのか、内部にもいろいろな立場の人がいる。トップキャリアを目指す人はローンの貸し出し量で勝負し、開発をやりたい人は思い切ってやれない不満と、はやりのテーマが変わっていく不安をもちつつ仕事をすると聞きました。私も世銀のいろいろな担当者と仕事や交渉をしてきましたが、話がつうかあの人と、銀行屋さんの人がいるなあと感じました。そう単純ではないのでしょうが、開発への影響力が強く、ユニークな強みを持つ世銀ですから、そのちぐはぐな部分を整理して、世界の問題の解決に貢献していってほしいと思います。久木田
"Youth" as development agenda 開発課題としての「... ニューヨーク国連フォーラム: NY UN Forum
ニューヨーク国連フォーラム・ワシントンDC開発フォーラムの皆様ご存知の方もいらっしゃると思いますが、2007年版の世界開発報告では「開発と次の世代」と称して初めて若者に焦点を当てます。MDG目標8のターゲット16となっている若年雇用の問題に対処するために活動を続けている世銀・ILO・国連事務局共同プログラムYouth Employment Network (YEN)、今年6月のILO総会での若年雇用に関する討議、また、東京合同オフ会でも話題となった世界銀行が2003年から世界各地で行っているYouth,Peace and Development (YDP)という若者たちとの対話にも見られるように、開発の当事者であり参加者である若者の身の回りの様々な問題を開発課題としてとらえる機運が盛り上がりつつあります。その流れの中での世界開発報告ということでしょう。日本ではニートやフリーターがここ数年話題になっており、これまで比較的平等だとされてきた日本社会の所得格差の拡大に繋がるというと言われたりしていますが、先進国・途上国を問わず(15歳から24歳までと統計上定義される)若者の失業率は上の世代の2から3倍です。また健康面ではたとえばHIV-AIDSの新規感染者の半分はこの年代です。ウェブ上の情報によると、世界開発報告では「学校を離れる、健康を保つ、仕事につく、家庭を築く、善い市民となる」といったテーマが取り上げられることが予定されています。2007年版といっても、既に執筆チームは動き出し、来年の3月までには原稿が出来上がる予定のようです。インターネット上でのディスカッションや、若者の組織との対話も予定されています。現在若者の世代の皆さん、あるいは(私のように)元若者の皆さんも、何らかの形でこの報告書の作成にかかわってみてください。詳しくは、下記のウェブサイトをご覧ください。http://web.worldbank.org/WBSITE/EXTERNAL/EXTDEC/EXTRESEARCH/EXTWDRS/EXTWDR2007/0,,menuPK:1489865~pagePK:64167702~piPK:64167676~theSitePK:1489834,00.html上田隆文(現在ILOを休職中で、JICAバングラデシュ事務所におります。)
最近の一連の議論を受けて ニューヨーク国連フォーラム: NY UN Forum
DCフォーラム、NYフォーラムのみなさん、 こんにちは、よしはら@休暇前です。 最近、いろんなフォーラで、政策評価、政策立案、オールジャパンとしての外交力、外部人材の活用、学識経験者の汎用性などについての議論が盛んになっております。 小生の投稿は漫然としていることが多く、あまり議論を惹起しませんが、あえて、個別具体的なハウツーものでないものを、ある懇意にしている先生への書簡を抜粋する形でここにご披露したいと考えております。 これを受けてみなさんは心中に何が沸き起こってきますか? ランダムにでいいので、議論が沸き起こることになるのでしょうか。ないしは、途上国、NY、DCの居酒屋、カフェで下記をネタに談論が起こるのでしょうか。 小生は、まもなく長期休暇に入りますが、小生もいずれブログなどをやってみようかなと考えています。(以下若干加筆の上添付) 小生は7月胆石と急性炎を起こした胆嚢を摘出するために入院しておりましたが、その際に司馬遼太郎の「空海の風景」を読みました。これまで不祥事の折に外務省が「変える会」「変えよう、、、」等の痛烈な反省の元で指摘があったように外務省は高野山のようで「高尚」と称する密教を難解な言葉で扱ってきたきらいがありますが、若き空海が唐の長安で見た様々な異民族を含む人々が醸成する雰囲気は全く違った創造的なものであったはずです。 人間、所詮高度な技術論は、ついていけなくなり、常識的な範囲が一番理解が得られて、うまく行くのですから、誰にでも分かる平易なことばで普段から語り、一部のものは除いて開放形で政策形成を行っていくのがいいのだ、そういう職場文化があればいいのだと考えます(要するにその日やった仕事を帰って嫁さんがわかるように説明できれば、外交官としては一人前だという暴論も成り立ちます。)。 今度の評価書が、ある人には価値判断を含むことにより、反論可能な程に明晰で論争が惹起されること、それにより複数の代替案が熾烈に競われることで、交渉能力が錬磨されることが大事なのかな、と期待しております。 それは報道課、国内広報課、情報公開室に続き、説明をするポストを4ポストも渉猟した小生の持論です。 ただ、その論争のためにであっても過度に残業をさせたくはない、そのためには過飽和になっている国家公務員の仕事を選択と集中により減らすことが必要なのでは、そうしないと人件費を総じて下げれば当然評価がより明かに処遇に現れる民間企業に人材が流れていくような気がしています。 古い仕事を抱えながら新しいチャレンジをすることは役人といえども人間ですから8時間の法定勤務時間を集中すればぼろぼろになってしまい、残業するゆとりはないはずですから。(以上添付終了)
平和構築:国連での議論 ニューヨーク国連フォーラム: NY UN Forum
山内さん、平和構築に関する議論の背景と論点を分かりやすくまとめていただいてありがとうございます。紛争から開発へ、人道支援から復興・開発など、国際社会や国連の活動の中での「ギャップ」の問題をどう解消し、不安定な状況から安定した社会にするためにもっとシステマチックに支援、協力していこうという時代が来たことは大変意義のあることだと思います。平和構築委員会の設置については、紛争から開発への不安定な時期を総合的に支援していくための支援オフィスと常設基金の設置、その役割と使用法、安保理、経社理、総会の役割など、全体の枠組みをいかに理想に近づけるかが重要な点だと思います。また、一方でシエラレオネの統合事務所の試みなど実践を通して学んでいくことも必要だと思います。(フリータウンの根本さん、今はどうなっていますか?)私は、1989年に国連移行支援グループUNTAGとともにナミビアに入り、停戦以降のソビエト、キューバ支援団の撤退、南ア軍の撤退や、その後のDDRの不安定な過程を体験しましたが、人道支援が続く中での選挙が終わり、SWAPOの勝利が決まるとともに復興、開発へ国民の期待が高まっていったのを覚えています。独立までの数ヶ月の間に閣僚予定者と開発についての話し合いを何度も繰り返し、現場視察へも行きました。その間、南アでのアパルトヘイトの終息やアンゴラのサビンビの動きなど不安定要因はいろいろあり、開発への取り組みと平和構築、治安などが一体となっていることを強く感じました。ユニセフでも来年一月の執行理事会に向けて、紛争や災害などの緊急人道支援の時期から復興・開発への時期の間の移行期Transitionのポリシーペーパーを作成しています。私は、その中の資金ギャップの問題を見ていますが、平和構築委員会と常設資金の行方は大変重要で、注目しているところです。来週はコンゴ民主共和国に出張し、DDRのその後や開発への資金調達の話を世銀や他の国連機関とする予定です。現場の人に「ギャップ」のことを聞いて見ようを思っています。いい話が聞けたらまたフォーラムで報告します。ユニセフ 久木田
J. Sachs: MDG and IMF-援助と自立の問題 ニューヨーク国連フォーラム: NY UN Forum
フォーラムの皆様、こんばんはコロンビア大学の橋本と申します。亀井さんと同じ、J.サックス教授の授業に出ています。先日、教育開発政策の授業にゲストスピーカーとしてお越しになった、ユニセフのシニア教育アドバイザー、キャロル・ワトソン博士からもサックス教授と同じような趣旨のご意見を伺いました。いわく、援助に依存して一国の開発を進めることに対する心理的反発が強いのはなぜなのか。持続可能性の問題や国家としての自立の問題が取りざたされるけれど、なぜわれわれはいまだに国家という枠組みにとらわれた思考でしか問題を見ることができていないのか。一人ひとりの「人間」の視点に立てば、援助増額が当然の論理的帰結ではないのか。一方で、この夏インターンをさせていただいたユニセフガーナでは、アフリカ人の上司が重債務国への債務帳消しはすべきではなかった、たとえ何十年かかっても、借りたものは返すべきだという基本的なことをアフリカ人は学ぶべきであり、アフリカの飛躍に最も必要なのはアフリカ人自身の援助依存症からの脱却である、と熱弁をふるっていました。援助が最終的に一国の自立を目指すものであることについては、議論の余地はないと思います。しかしながらその過程で、援助依存症を避け、途上国が自立した政策運営を行うことは非常に難しいと思います。そのためにはMDG達成だけにとらわれて近視眼的になるのではなく、MDGの先を見据えた自立へ向けた開発政策が、援助側・被援助側双方にあること、が重要なのではないかと思います。同時に、ワトソン博士のおっしゃるように、国家という政治的枠組みに支配されていない、市民社会からの援助が、もっと安定してかつ大規模になっていけば理想的なのかなあ、などとつらつらと考えました。実際に開発現場で活躍されている皆様は、援助と自立のジレンマにどのように対応されているのでしょうか?橋本 のぞみコロンビア大学 国際行政学院政治経済開発専攻
速報:国連本部ビルの停電と閉鎖 → 国連のカネの... ニューヨーク国連フォーラム: NY UN Forum
国連フォーラムのみなさま。田瀬@人間の安全保障ユニットより。本9月19日、昼ごろに国連事務局ビルで電気系統の障害がありまして(一部には火災という情報も)、照明以外の電源が「ブン」といって落ち、エレベータも止まり、仕事ができない状態になってしまいました。2時過ぎには照明を含めたすべての電気が止まり「4時過ぎには事務棟を閉鎖して復旧を行なうので、警備を含めた一部の職員以外は自宅待機するように」とのアナウンスが流れました。というわけで現在私は自宅に帰ってきて作業をしています。国連本部ビルは1952年に建ったものだそうで、老朽化でいろんなところにガタがきています。エアコンの水漏れで上の階から雨漏りしたり、最悪のケースではうちの階(18階)でも天井の一部が崩れて落ちてくるという事故が最近ありました。早朝だったのが不幸中の幸いでしたが、真下に人がいたら絶対ケガしてます。そのくらいの規模の事故でした。また、夏の間は南極のように寒くなり冬の間は蒸し風呂の中にいるように暑くなるという、まったく制御の効かないエアコンもこのビルの名物です。笑ってる場合じゃないんですが・・・幸い、すでにこの老朽化には対策が講じられています。いわゆる「キャピタル・マスター・プラン」というやつで、いまの本部ビルのすぐ南側の敷地に新しいビルを建てることとなっており、担当局長に日本人の丹羽敏之氏が任命され、デザインには日本の建築家で「幕張メッセ」を設計した槙文彦氏が担当することが決まっています。ただ、費用をどうするか、特に米国がその融資に利子を貸すかどうかといった問題で、たいへんすったもんだしたと聞いており、さらに建設予定地に隣接するTudor Cityの住宅用ビルの住人との関係で、工事ができずに止まっているという話も耳にします(正確な情報を持っておられる方、教えて頂ければ幸いです)。そういうわけで、われわれはもうしばらくはこのビルで仕事を続けることとなりそうです。この話がどこへ行くかというと、国連の行財政と予算の問題、そして各国による分担金の問題に行き着きます。私は2000年の国連分担率交渉のプロセスに関わりましたが、こうしたビルの管理まで含めて国連の予算をどうするか、さらにそれを加盟国間でどう共有するかは、国連の問題の中でも実は最も重要なもののひとつだと思います。日本は現在、国連の通常予算の約5分の1弱、19.5%程度を負担していて、22%を払っている米国と合わせるとそれだけで40%を越えるわけです。また、PKO分担金も支払いが義務となっているのですが、昨今のPKOの激増により、その額は日本の分担だけで年間1000億円を越えると聞いたことがあります(これも正確な数値をご存じの方、教えて下さい)。来年2006年には再び分担率交渉が行われます。非常に激しい交渉となることが予想されていますが、日本はどのような立場で臨むべきとみなさんはお考えでしょうか。純粋にGDP比率で考えると分担率は大幅に下がるべきという計算になります。また「代表無くして課税なし」という観点から、常任理事国になれないのであれば支払いをストップするべきであるという考え方も最近は多く聞かれるようになってきました。少数派ですが、逆に「もっとたくさん払って経済的に国連を牛耳るべきだ」という意見もあると承知します。ただ、国内の大多数の意見は、日本は払い過ぎであるし、金を払えば地位を得られると思うのはあまりにお人よし過ぎる、ということかと思います。お金は同じ金額でもゼロから無限大まで、いかなる価値をも生み出します。しかし特にそれが日本を含めた諸国民の税金である場合、いかにその価値を引きだすか、悪用させないかが、立場を問わず政策を担当するものの責務であり、また国民の側からみればしっかりと監視すべき対象であると思います。停電でいろんなことを考えちゃいました。明日は復旧されてエレベータが使えることを祈ります。それでは。
ODAが国の発展に対して必要か? ニューヨーク国連フォーラム: NY UN Forum
橋本さん、亀井さん、おふた方のメールを興味深く読ませていただきました。現在コロンビア大学で教育経済の博士課程に在籍している水野谷と申します。お二人の話をお聞きして、幾つか思うところがありましたので、皆さんのお考えをお聞きしたく投稿させていだだきます。1.ODAが国の発展に対して必要か?財政赤字縮小のために、財政緊縮するのでなく、ODAのグラントを増加し、財政安定と政府支出拡大によるインフラ整備を目指す、という主張は国の会計としては筋が通っていますが、財政安定が国の発展にとって、最重要課題なのかという疑問があります。国によっては、通貨安定が、国の存在そのものを脅かす経済状態になっている国もあるでしょうが、そうでない途上国も多いのが現実ではないかと思います。緊急の対策を要する援助分野として通貨安定が必要な国もありますが、ODAが国の発達に対して必要かどうか一般論を述べるのであれば、一歩下がって国が自立していくための根幹となる要因を考えなければならないと思います。私論で恐縮ですが、極論をすれば国が発達するための要因は次の2点にあると思います。1.国の発展のためには、その国民を食べさせていく産業が必要である。2.国の発展のためには、産業育成と再分配の国家機能が強化されなければならない。経済の発達とその再分配の中でしか、国の発展は存在しない。その過程の中で、ガバナンス、透明性、法治国家としての素養、民主主義が涵養されていくものと考えています。税金を納めない国民と、税金の使い道を説明しない官僚と政治家の治める国が発展するというのは考えられません。税金を徴収して配るという機能が国家機能の大動脈だと思うのですが、ODAは税金の入り口のベースである、産業育成のインセンティブにも、税収機能の強化のインセンティブにもなりません。また、ODAによって、資金へのアクセスがあり、債務超過になれば債務帳消しもありえるので、国の経済活動を根本から支える金融市場を発展させるインセンティブもありません。この様に、ODAは発展に関する組織的なインセンティブを低下させますが、同様に個人レベルで人的資源に対するモラルの低下も招くと考えられます。アフリカで仕事をされた方は良く身にしみて分かってらっしゃると思いますが、多数の官僚は国の行く末を考えず、高給のもらえるNGOやその他援助機関への就職、海外研修、海外留学と海外で生活基盤を立てることに日々のエネルギーを使っています。政治家は重要ポストにつくと、いつでも海外逃亡できるように海外に家族を住まわして、できる限り国家資源を搾取しようとしたりします。国民意識の低い貧しい国に生まれたならば、この様な判断はむしろ合理的であり、ODAがこの様な合理的な判断をする環境を作るのに一役買っていると思います。これらの観点から、緊急に援助を要する案件に対するODAは必要だと思うのですが、国の発展のために前述した2点に寄与しないODAは必要ないか、むしろマイナス要因の方が大きいのではないかと思っています。2.国を超えた枠組みで援助を考える必要はあるか。一般論として、一国一国は独自の存在であり、個人個人が自助努力で生活を成り立たせているように、国家も自助努力で発展していくべきであると考えています。ですが、例外はありますし、このような国には恒常的なODAによる援助が考えられてもいいかと思います。例えば、日本では、「公平性の高い社会を作りたい」という社会的な合意と、「経済発展は都市化を通じて実現する」という経済の特質によって、都会で吸い上げた税金を、公共事業や米の政府買い上げを通して、恒常的に田舎に還流し公平性の高い社会を作ってきました。同様に、公平性の高い世界を作りたいというのであれば、世界の田舎には、世界の都会から恒常的に資金を還流してもよいかと思います。資源の無い、面積の小さい、人口の少ない、海のアクセスの無い国に経済発展を求めるのは非現実的ですし、この様な投資によってその国が安定するなら、この投資は近隣諸国にとっても意味のある投資であると考えられます。あまり知られていませんが、この思想の延長上でILOでは「グローバルソーシャルトラスト」という基金を通して、途上国の健康保険のプレミアムを先進国が時限を切って援助するという仕組をルクセンブルグとガーナでやろうという試みがあります。http://www.ilo.org/public/english/protection/socfas/research/global/global.htmただしこれは一定期間後は被援助国が健康保険のプレミアムを負担するようにデザインされているので、恒常的な資金援助という訳ではありません。3.マクロアプローチとマイクロアプローチの援助効果についてここまでは、税収や産業育成などの、マクロアプローチについて論じてきましたが、民間及びNGOが主導するのが望まれる分野もあると認識しています。中央主権でやるべきもの(例:税制、水道、道路、国防、基礎年金)、地方主導でも有効なもの(例:小学校建設、地域健康保険)、民間でやるものやれる物(例:ビジネスネットワーク、年金の2階)の住み分けは援助効率を高める上でも重要かと思います一方、今日のネパールやフィリピンをみれば、民間援助の量が増大しても、その援助の国家発展に寄与する割合は比例しないと思われます。以上がお二人のメールを見て考えたところの感想です。皆様はいかが考えられましたでしょうか?水野谷
平和構築:国連での議論 ニューヨーク国連フォーラム: NY UN Forum
山内様、久木田様、ニューヨーク国連フォーラムの皆様コロンビア大学大学院(SIPA)の清水です。山内さん、平和構築委員会についての包括的なご説明、ありがとうございます。平和構築には関心を持っており、興味深く読ませていただきました。同委員会の活動は、基本的には「助言」や「勧告」となっていますが、安保理理事国、経社理理事国、ドナー、要員派遣国、国連機関、国際開発金融機関、当事国、地域関係国/機関が一同に会するわけですから、実質的な政策対話の場になるチャンスがあると思います。「統合的なアプローチ」は、現場レベルでまずは進んでいるようです(山内さんがシエラレオネの例を挙げられたのに加え、東ティモールでもPKO後の平和構築ミッション(UNOTIL)が設立され、長谷川SRSGがUNOTILの長、常駐調整官、UNDP常駐代表を兼ねられています)。これをニューヨーク・エンドでも進め、国際社会の関心の惹起と資源の動員を図っていこうというのが、同委員会の意義だと思います。今日、コロンビア大学のマイケル・ドイル教授と議論していて出てきた話なのですが、懸念としては、意思決定がコンセンサス方式とされていることです。それ自体は委員会の性質を考えれば自然なことだとは思うのですが、コンセンサス方式は全てのメンバーが拒否権を有するということであり、議論の対象とは関係のない自国の国益のために、票を「人質」とする国が出てきて、意思決定が遅れるおそれがあります。ここでドイル教授は、マケドニアが台湾と国交を持っていたことを理由に、中国がマケドニアPKO(UNPREDEP)の延長に拒否権を発動した例を挙げられました。せっかく平和構築委員会を設立しても、このような事態が生じれば、平和構築委員会なんて作らなければよかった、なんていう話になりかねません。ではどうしたらいいのか、という肝心なところでアイデアはないのですが…。成果文書で定められた期限まであと3か月しかありませんが、同委員会が無用の長物とならないよう、設立の趣旨に合った十分な機能ができるよう、良く設計される必要があると思います。あとは、日本としてどのように関わっていけるかという点にも興味があります。常設基金には多かれ少なかれお金を出すことになるとは思いますが、平和構築事務局にもぜひ人を出せればいいのではないかと思っています。
平和構築:国連での議論 ニューヨーク国連フォーラム: NY UN Forum
ニューヨーク国連フォーラムの皆様 初めまして。現在国連代表部経済部にて専門調査員をしております、山内と申します。本日は、「平和構築」の問題に関し、国連において行われてきた議論を可能な範囲で皆様と共有したいと思い投稿致しました。皆様と認識が異なる点があるかもしれませんが、有意義な議論のベースになれば幸いです。宜しくお願い致します。今般採択されたサミットの成果文書の大きな成果の一つは、「平和構築委員会」の設置であると言われています。成果文書においては、平和構築において、「調整され、一貫性のある、統合的なアプローチ」が必要であると強調された上、国連がそこで重要な役割を果たすことができるとして、「平和構築委員会」を設置することが決められました。以下は、「平和構築委員会」に至るまでの平和構築を巡る議論の流れについて、私なりの見方を記したものです。【平和構築に対するアプローチの変遷】そもそも、平和構築が国連において最初に注目されたのは、1992年、当時のガリ事務総長が発表した「平和の課題」であったと言われています。「平和の課題」においては、紛争が始まる前の予防外交、紛争が始まった場合のpeace-making及びpeace-keeping、そして紛争が終結した後のpeace-buildingという流れが示されています。平和構築は、この流れのなかで、平和維持に続く活動として捉えられています。2000年に国連の平和活動の包括的な見直しを行ったブラヒミ報告が発出されます。同報告においては、平和構築は、紛争が未だ終結していない初期の段階から平和維持と並んで不可欠な取り組みであると考えられます。ここでは、平和維持と平和構築は同時並行で取り組むべき課題と捉えられ、両分野が「統合」した形で行われる必要性が指摘されています。2004年、国連改革の議論の基盤となるハイレベル・パネル報告が発出されました。ハイレベル・パネル報告は、平和構築についても新しい考えを示しています。特に注目すべきは、(1)国際社会は、国家が紛争に陥ることを防ぎ(紛争予防)、また、紛争から立ち直ることを支援する義務があるとした上で、国連には紛争予防から紛争後の復興までを一貫的に支援する制度がないことを指摘したこと、(2)このような制度的なギャップを埋めるためのツールとして「平和構築委員会設置」を提案したこと、(3)この提言を通じて、平和構築概念を従来の紛争後の活動から、紛争予防を含むものに拡大したことです。両報告を受け、2005年、国連事務総長は、「In Larger Freedom」を発出しました。ここで、国連事務総長は、平和構築に関しパネルが提起した問題意識(国連システム上の深刻なギャップの存在、平和構築委員会の設置)を共有します。しかし、事務総長は、平和構築委員会が早期警戒的な機能を持つことを否定し、ハイレベル・パネル報告が提案した紛争予防を含む平和構築の拡大された定義を退けています。【統合問題と平和構築】先ほど、ブラヒミ報告が平和維持と平和構築の「統合」が必要であると指摘していると紹介しました。この「統合」の議論の根底には、安全保障分野が人道・開発と密接に関連していること、つまり、政治的安定や治安状況の改善無しには復興・開発は困難であり、逆に復興・開発の進展無くしては、政治的安定・治安状況の改善も期待出来ないという認識があります。ここから、安全を追求する活動と復興・開発のための活動との密接な連携が必要という結論が導かれます。安全のためのPKO等の活動と人道・開発のための国連機関の活動の間の密接な連携、これが「統合」という概念の意味と考えます。それでは、この